素敵な夜はあなたと・・・

 顔を真っ赤にさせて咳ききったような息をしながら渡した袋は近所のコンビニの袋だと茜は気付いた。斎藤が、急いで買ってきてくれたのだと分かると、斎藤のその気持ちが嬉しくなる。



「ありがとう。わざわざ買って来てくれたの?」

「いや。その。美味しそうだなって思ったら茜が食べたいんじゃないかと思ってさ。」

「ありがとう!」


 落ち込み続けていた茜だが、こんな風に心配してくれる人がいたのが嬉しかった。一番信じていた母親に裏切られた気分の茜は夫である優也にも裏切られ何もかも信じられなくなりそうだった。

 そんな時に、斎藤の優しさはとても嬉しくて有難くて茜はその優しさに縋りたくなった。


「斎藤君、一緒に食べない?」

「え・・・でも、いいのか?」

「うん、いいよ。それに、これ斎藤君が買って来たんじゃない。一緒に食べよう?」


 久しぶりに見た茜の笑顔に斎藤は嬉しくなって飛び上がりそうになった。
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