素敵な夜はあなたと・・・
斎藤のさりげない優しさが嬉しいと感じた茜は、これまでおどけることばかりして周りを笑わせていた斎藤が、相手の気持ちを考えてくれる優しい人なのだと分かるとまるで別人のように思えた。
すると、斎藤に対しこれまでしなかった意識をしてしまった。
「斎藤君、優しいね。」
「そりゃあ、茜の為だからさ。」
そんな言葉を言われたのは生まれて初めてで、茜はちょっとくすぐったく感じてしまう。それでも、斎藤は大事な友達の一人だと思っていた。
すると、神妙な顔をした斎藤が茜を真剣な目で見つめた。その斎藤の表情に一瞬ドキッとしてしまった茜は顔を背けてしまった。
優也にもそんな瞳で見つめられたことはないのにと思いながらも、今の斎藤の熱い眼差しをどこかで見た記憶があると茜はその記憶を辿っていた。
いったいどこで斎藤のこんな熱い目を見たのだろうかと、見たことのある瞳なのに思い出せない茜だった。
「なあ、茜、俺と付き合わないか?」
「え?」
予想もしていなかった斉藤からの告白に茜は冗談かと思ってしまった。落ち込んでいる茜を励まそうと斉藤が冗談を言ったのだと思っていた。