素敵な夜はあなたと・・・
茜の気を紛らそうと冗談を言った斉藤に冗談で応えてやろうと思った茜は、笑顔を振り撒いて斉藤の告白に乗った。
「いいよ、付き合おう♪」
何も考えていない顔をする茜を見て勘に障った斎藤は茜の肩を掴んで自分の方へと引き寄せた。
そして、茜の唇へとキスをすると真っ赤な顔をして斉藤が怒っていた。
「俺、本気だからな!茜のことずっと好きだったんだからな!」
赤く染まる斉藤の顔は、熱いくらいに茜を見つめていた。その瞳に茜はこの瞳を何処で見たのかを思い出した。
クリスマスイブの日、実家で優也が母親の美佐を口説いていた時だった。優也の真剣で必死な瞳と同じだと思った。
そして、そんな瞳をした優也は美佐にキスをした。とても熱くて燃え上がりそうなほどのキスに思えた。
「なら、燃え上がるようなキスしてよ。」
茜はあの時の優也のキスの味を知りたかった。どんなに激しいものか。
斎藤は茜の言葉に真っ赤になるとキスしたい衝動を止められなかった。茜に言われたからではなく、大好きな茜を少しでも感じたかった斎藤は、しっかり茜を抱きしめ茜の唇に何度もキスした。
茜にはこれが生まれて初めてのキスだった。
キスがこんなに切なくて苦いものだとは知らなくて涙が流れそうになった。