素敵な夜はあなたと・・・

「君を幸せにするから。約束するよ。大事にする。」



 優也は大事にすると言ってくれる。そして抱きしめられるその腕がとても安心できるように感じる茜は不思議な感覚に陥っていた。



「ありがとう。」

「さあ、腹ごしらえだ。たらふく食べないと部屋の片づけなんて出来ないぞ。しっかり食べるんだよ?」

「うん」


 まるで父親に言われている様な気分だった。優也との年齢差を感じるがいったいどれほどの差があるのだろうと茜は気になってしまった。


 茜の父親は今年で34歳という若さだ。高校時代に母親の美佐と恋仲になりその時に茜が生まれた。高校生が出産したのだから、今16歳の茜の両親は当然の如く30代前半なのだ。これから恋をし結婚しても十分遅くない年齢の両親を持った茜には優也がそんな両親と近い年齢に感じていた。


 だから余計に優也は夫と言うより父親のような存在に感じてしまう。


 車から降りた優也は茜の助手席側のドアを開けると紳士らしく茜をエスコートする身振りをする。こんな扱いは父親にもされたことがないのにと笑ってしまった。


 すると「俺は夫だからね」とさりげなく言う優也に茜は頬を紅色に染めていた。そして、出された手に自分の手を重ねると初めての経験に心臓がドキドキしていた。ドキドキしたものの肝心な茜の質問には答えてくれなかったことを忘れてはいなかった。

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