素敵な夜はあなたと・・・
「お前が頑なな態度のままでいるのなら、あの彼氏に事実を告げても良いのだぞ。俺達が夫婦だとな。そうなれば彼はどのみち茜から離れていくだろう。」
「そんなことさせない。」
「嫌ならマンションへ戻れ。」
「じゃあ、マンションへ戻れば別れなくていいのね?」
「誰もそんな事は言ってない。」
優也はまずは茜をマンションへ戻すことを考えていた。しかし、今のままでは茜は斎藤と別れるような素振りはない。それでは困ると優也はどうしたものか考えていた。
「マンションへ戻っても良いわよ。でも彼とは別れない。覚えておいて。」
「自分の妻に男がいてそれを知らん顔しろって言うのか?」
優也は頭に手を当てて如何にも夫らしい素振りを見せているが、それは見せかけのものだと茜は知っていた。だから、優也がどんな表情をしようがどんな態度に出ようが茜の事を本気で考えているとは思っていなかった。
「今更私を妻だと言うの?ちゃんちゃらおかしいわ。笑いが止まらないわね。」
「・・・書類上は妻だ。」
「そうね、でも、妻としては見ていないでしょう?」
「・・・それは、」
茜の言葉に優也の本音が少し垣間見えた茜は、その表情が優也の本当の気持ちなのだと気付いた。会長命令で仕組まれた縁談だから渋々受けて結婚した。けれど、優也はどんなに優しくても茜を妻として見たことは一度もなかった。