素敵な夜はあなたと・・・
「隠さなくても良いわよ。それに、私を連れ戻した所で私を妻として扱うつもりはあったの?」
「ごめん・・・・君を妻とは考えられない。」
優也が初めて自分の気持ちを伝えた。茜はその素直な気持ちの優也の方が何倍も好きだと思えた。これまでの優しい優也はどんなに茜を大事にしていても、どんなに優しい眼差しで見守ってくれていても、それは全て偽りだと分かると嬉しくもなんともない。
妻とは思えないと言う優也の言葉は真の姿を見せている様で、優也が美佐を思っていてもその姿の方が人間らしくて好ましいと思えた。
だけど、優也の気持ちがハッキリした以上は茜はもう一緒にいたくなかった。
「なら、離婚して下さい。」
「できるものならそうしたい・・・・だけど、それは無理だ。」
茜と離婚出来ないのがそれ程に苦痛なのだろうかと思うほどに優也の顔面は悔しさで歪んでいる様に見えた。それ程に心ない結婚をしたのだと分かると茜は諦めもつくのだと思えた。
これ程に優也の気持ちが茜に無いと分かってしまうと、茜は自分を守る為にも斎藤の優しさは自分に必要だと感じた。
「いいわよ、別にそれでも。でも、私は彼とは別れない。私には彼が必要なの。」
茜のその言葉に優也は動揺を隠せなかった。夫と言う存在がありながら他の男を求める茜の気持ちが分からない優也は茜の腕を掴んでいた。その掴む手はかなり力が入り茜の腕は赤く変わっていた。