素敵な夜はあなたと・・・
冷え切った生活
茜に全てを知られていると分かったその日から、優也は茜と上手く話をすることすら出来なくなっていた。
そして、茜はその日から優也には遠慮することなく斎藤との交際も深めて行った。
朝食を食べた茜は以前なら台所へ食器を運ぶくらいはやっていた。優也にばかり任せられないと茜も片づけの手伝いをしていた。しかし、今の茜は何も手伝おうともしない。
ただ、洗濯物だけは自分で全てやっていた。優也に自分の下着などを触られたくないと言うのが本音だった。
そして、毎朝、優也の車で登校するが、以前なら優也の運転する車の助手席に座っていた茜だが、今は絶対に助手席には乗らなかった。
「ありがとう。」
学校の校門前で下ろして貰うと「ありがとう」という言葉だけは言うが、それも無表情で棒読みな言い方に優也は憂鬱な時間を過ごしてしまう。自業自得とは言え茜にあからさまな態度を取られると、流石の優也も心苦しいと思い始める。
車から降りた茜は校門前で友達に会うと、以前見たような笑顔を友達に向けていた。もう、自分には二度とあの笑顔を向けてくれないのだと分かると優也は寂しく感じた。
それでも一緒に暮らせる悦びがあるのだからと優也は自分を慰めていた。