素敵な夜はあなたと・・・
「俺のお姫様、どうぞ。」
「俺のお姫様」と言う言葉を聞くと茜は気分が良くなかった。優也はよく茜をお姫様扱いしていたからだ。大事にすると言いながら茜をお姫様気分にさせた優也だが、それも全て美佐の娘だからで妻としての茜ではなかった。
そんな残酷な現実を思い出したくないのに、その言葉一言で優也を思い出してしまう。笑顔を向けられた優しい優也に心が傾きかけていた頃を思い出すのが辛くなる。
「茜? どうかしたのか?」
「斎藤君、帰らないで。お願いだから、一緒にいて。一人は寂しいの。」
「茜・・・・・うん、いいよ。茜の為なら俺なんでもする。」
茜のマンションに二人一緒に泊ったその夜は、茜は優也のマンションへは帰らなかった。深夜遅くまで起きて待っていた優也だが、帰らない茜が今どこにいるのか心配でジッとしていられなく、部屋を飛び出すと車に乗り込んでいた。
そして、一番考えられるのはあのマンションではないかと茜のマンションへと向かった。
優也が茜達のいるマンションへ向かったとは知らず、二人で楽しく食事をした後は、リビングのソファーに仲良く抱きしめあって話に夢中になっていた。
斎藤は時折茜にキスしながらもっと茜が欲しいと触れたがったが、茜はまだ心の準備が出来ないからともう少しだけ待っててほしいと頼んでいた。
斎藤は茜を傷つけることだけはしたくなかった。だから、この夜も無理強いはしていなく抱き締め乍ら茜が好きなキスだけをしていた。