素敵な夜はあなたと・・・
「帰るんでしょう?」
「今夜はここに泊ろう。」
優也を茜のマンションに泊めるなど考えられないことだった。それに、茜の寝室には斎藤の荷物を色々と置いている。そんなのを優也に見られれば今後の斎藤との交際にも響くことは分かっている。だから、茜は「優也さんのマンションへ帰りましょう」と直ぐに部屋を出てしまった。
「茜、もう遅い。今夜はここに泊って明日の朝帰ろう。」
「いいえ、ここはあなたの家じゃないわ。だから、泊めることは出来ないわ。」
斎藤との大事な空間であり、優也には触れて欲しくない空間でもある。斎藤の存在を疎ましく思われるのも嫌だし、そんな扱いをするのも茜には耐えられないことだった。
だから、茜は直ぐにリビングの電気を消すと玄関へと向かった。
真っ暗になったリビングの中を見渡し溜め息を吐いてリビングを出た優也も玄関へと行くと靴を履いた。
「この場所は俺も知っているんだ。次からはあの男はここへは連れ込むな。いいな。」
「そんな権利があなたにあるとは思えないわ。」
茜はこれ以上の言い争いはしたくなかった。足早に玄関を出るとエレベーターへと向かった。優也は合鍵を使って玄関の鍵を閉めると茜の後を追って行った。