素敵な夜はあなたと・・・

 茜が思いっきり玉子をボールの門にぶつけようとするのを見て、「うわぁ!!!」っと優也は思わず大声が出てしまった。


 その声に驚いた茜はビクッと体が止まってしまった。



「何なの?!」

「それじゃあ玉子が潰れてしまう!!」

「え? だって、これ、随分硬い殻でしょ? 思いっきりぶつけた方が良く割れそうだけど?」

「ダメだよ! そんな事したらグチャグチャになる。見ててご覧。」



 茜の手に持っていた玉子を取り上げると優也は優しく玉子を割ってフライパンに落とすのを実践して見せた。


 慣れた手つきの優也に茜は思わず拍手を送っていた。



「すごーい、キレイ!」

「いや・・・・たかだか目玉焼きがこんなに疲れるとは思わなかったよ。」

「え?なに?」

「じゃあ、後はお願いするよ。」


 
 優也は玉子一つ割るのにこんなに苦労したことはなかった。茜には玉子一つ常識が通じない育てられ方をしたのだろうかと美佐の子育てには納得できない部分があった。


 大事に優しく包み込むような育て方は決して本人の為にならないと感じた優也。茜のこれからを思えば少しは手伝いをさせることは大事な事だと感じていた。


 まるで自分が子育てをしている気分になっていた。


 けれど、一生懸命に楽しそうにやっている茜を見ると何故か心がとても明るくなってしまう。


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