素敵な夜はあなたと・・・
朝食を終えた二人は早速出かける準備をする。茜は学校へ、優也は会社へ。
なのに、優也は茜を車で送ると言い出した。
「反対方向だから遅刻しちゃうよ!」
「大丈夫、これは会長命令でね。職場には朝一番で会長からの仕事を受けているとなっている。問題ないんだよ。」
「でも、」
茜は送って行くと言う優也に申し訳なかった。会長権限でこんな雑用を優也にさせてしまう事に。
駐車場へと行くと優也は助手席のドアを開けてくれた。茜がシートに乗るのを確認しその後ドアを閉めてくれる。こんな扱いは夫と言うより使用人に様に感じてしまう。
「ありがとう」
「お礼は必要ないよ。」
「これも仕事の内だ」と、言いたそうな表情をしている様にも見える。なのにそんなセリフは絶対に言わないし笑顔を茜に向けてくれる。常に嫌な顔をしない優也。そんな生活を毎日送るつもりなのだろうかと茜は少し心配になる。
「私ならバスや電車があればそれで通学するよ? それがダメなら運転手を実家から、」
「その必要はない!」
初めて荒げた声を上げた優也。初めて聞いた厳しい声に茜はビックリしてしまった。