素敵な夜はあなたと・・・
美佐の前で悲しそうな顔をしてはいけないと感じた茜はいつもと変わらぬ表情で着替えを始めた。
「私の洋服は一枚くらいは残しているんでしょう? それに着替えるわ。」
「待ってて、着替えの洋服は決まっているのよ。」
そう言って美佐が用意した服を茜に見せた。それは純白のウェディングドレスを思わせるような見事なまでの純白の総レースのワンピースだった。
まるで花嫁衣裳のように見えた茜は、着物を脱ぎながら横目でワンピースを見ていた。あの服を着た茜を見て優也はどんな反応を見せるのだろうかと思うと茜はあまり気分の良いものではなかった。
「着物は後でお母さんが片づけるからそのままでいいわよ。」
「うん、ありがとう。」
「純白のウェディングドレスを着せてあげられなくてごめんね。こんなワンピースであなたの一生の一大事の日を飾るなんて。」
「私には純白のウェディングドレスに見えるよ」
きっと優也の目にもそう写るのだろうと思いながら茜は用意されたワンピースに着替えた。絹の様な優しい肌触りの総レースのワンピースが妙に痛々しく感じる美佐は涙が止まらなかった。
そんな美佐を思いっきり抱きしめると茜は決意したように座敷へと戻って行った。