素敵な夜はあなたと・・・
「お母さん、大丈夫?ご飯食べれそう?」
「大丈夫よ。ごめんね、折角の新婚旅行なのに。台無しにしちゃって。お母さんねお父さんに迎えに来てもらうわ。」
「光一さんは仕事で時間が取れないでしょう?そんなに帰りたいなら明日帰りましょう。」
美佐がいなければ優也は茜と二人だけの旅行をするつもりはなかった。
だから、皆で帰ると言い出した。
茜は母親を喜ばせたくて一緒に来た旅行なのに、その母を追い返すようで表情が曇った。そして、手には拳を握り締めていた。
「折角来たのに?」
「お母さんが帰りたいのなら一緒に帰るべきだろう?」
「だけど、」
茜は美佐の所へ駆け寄ると小さな子供が母親にすがるように抱きついていた。
そんな茜の頭を撫でている美佐を見て、優也はこれが今の自分達の関係なのだと思えた。
茜はまだ妻になるには幼すぎる。やはり、娘として幸せな時を過ごさせるべきだと。
そして、美佐には夫の光一とは離婚してもらうと優也の気持ちは決まったようだ。
「茜、明日、ここを出るからそのつもりで。」
「でも、」
「だめだ、お母さんを困らすつもりで来たんではないだろう?もっと、お母さんの事を考えないといけないよ。」
優也の言葉に茜は頷いていた。けれど、納得した顔はしていなかった茜は洋室から飛び出すと庭へと出てしまった。
「困った娘だ。」
その言葉に美佐は違和感を覚えた。