素敵な夜はあなたと・・・
男の人の車に初めて乗った茜は緊張でぎこちなく落ち着きがなかった。そんな茜を見て優也は笑いながら「リラックスしてていいよ」と優しい言葉を投げかける。
それでも、茜にはその言葉さえもが緊張の元で頭の中はすでにパニック状態が続いていた。
「茜はどんなものを食べたい? 茜が食べたいものを食べに行こう。」
急にそんなセリフを振られても困る茜は俯いたまま黙り込んでしまった。外食をすることは良くあるが、それは両親や祖父らと一緒の時だけ。友達はおろか男の人と二人だけの食事は初めての経験で何を食べていいのか茜は困ってしまった。
「自分が食べたいものでいいんだよ。高校生ならハンバーガーが好きなのかな? ランチだったら別にそれでも構わないよ?」
優也はやはり茜に合わせて優しい物腰で話しをしている。そんな優也に茜の緊張も少しずつ解れていくが、だからと急に馴れ馴れしくもなれずに戸惑っていた。
「......茜が想像通りの人で良かったよ。会長がこの縁談を持ってきてくれた時は正直心配だったんだ。」
「おじいちゃんから縁談を?」
会長自らの縁談であれば、夫となったこの優也と言う人物はきっと将来有望視されている社員なのだろうと、高校生の茜でもそれくらいは分かっていた。