クールなCEOと社内政略結婚!?
「なお美がこの世からいなくなって、十一年か」

 思いっきり泣いた父は、すがすがしい顔で私の隣に座っていた。

 母への挨拶を終えて、ふたりで父の車に乗り込むと、行き先を言わずして走り出した。お墓参りの後に食事に行くのが私たち親子のいつもの行動パターンだった。

 走り出して、しばらくして私は父に話しかけた。

「お父さん、元気だった?」

 父はそんな私の問い掛けに、不機嫌になる。

 あぁ、忘れてた。この人超絶面倒な人だった。

「ごほんッ……。パパ、元気だった?」

「あぁ、あさ美。元気だったよ。あさ美も元気そうだね。ますます綺麗になって……ぐずっ……なお美に似て……綺麗に……うううぅうう、なお美ぃいいい」

……あぁ、また始まった。

 突然泣き出した父に、車の運転をしている父の秘書で――私の幼馴染みでもある――飯島俊介がバックミラー越しにあきれた表情でこちらを見ていてる。

 そんな俊介に肩をすくめてみせると、彼も小さい頃から変わらない笑顔を見せてくれた。
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