クールなCEOと社内政略結婚!?
「管理人に連絡して、準備してもらったから一泊くらいは困ることはないはずだ」

 根回しの良さに驚く。いつここに来ることに決めたのだろうか?

 リビングに到着するなり、孝文がスーツのポケットからスマホを取り出した。画面が光っていることから、電話がかかっていることがわかった。

「おふくろだ」

 私にスマホを押しつけようとしてくる。

「どうして、私が出ないといけないんですかっ?」

 あんなふうに逃げ出してきたのだ。きっと怒っているに違いない。

「俺が出たら面倒だから、お前が出ろ」 

「そんなの、私が出たって面倒なことにかわりはないよね?」

 しかし孝文は反論する私に、自分のスマホを投げた。

「わっ……」

 見事キャッチした瞬間、スマホがひとりでに話し始めた。どうやら通話ボタンを押してしまったらしい。

すでに声が漏れ聞こえているスマホを孝文に返すわけにもいかず、私は覚悟を決めた。

「もしもし……」

 話し声を遮るように、電話にでると、『あら、あさ美ちゃん?』と軽やかな声が返ってきて、まずはほっとした。

「あの、すみません。勝手なことして」

『あなたが謝らなくていいのよ、どうせ孝文が勝手にやったことでしょう?』

 さすが母親だ、息子の事はよくわかっているみたいだ。
< 116 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop