クールなCEOと社内政略結婚!?
 車が緩やかに減速を始めたころには、やっと父は泣き止んでいた。泣きはらした真っ赤な目の父の後に続いて、店の中に入った。

 都内でも有名な、高級中華料理店は一階はダイニングになっているが、二階・三階は個室になっている。父が顔をみせるとすぐに係員が三階の個室に案内してくれた。

 大きな窓のある、丸いテーブルのある個室はふたりで食事をするには少々広すぎる気がする。大きなガラスの向うには、銀杏の木の青々とした葉が見えている。おそらく季節ごとに食事をする客を楽しませるのだろう。

 最初に出された食前酒を飲みながら、お互いの近況の報告をする。

 父、宗次護との衝撃的な出会いのあと、私が彼の戸籍に入ると決心したのは、なにを隠そう母の遺言があったからだ。母の葬儀に駆けつけた父と、その弁護士が母の残した遺言を私に見せた。

 そこに書かれていたのは、目の前の男が間違いなく私の父親であるということ。母にもしものことがあれば、成人するまで彼の保護を受けるようにと書いてあった。
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