クールなCEOと社内政略結婚!?
「は、入ってこないでって言ったのに。大丈夫なのに……」

 顔を見て安心したのに、口からは可愛くない言葉が出てくる。

「そうだったな。だけど、そんな泣きそう顔してまで大丈夫だなんて言うなよ」

 孝文の大きな手が私の背中にまわされた。そしてゆっくりと私の体を胸に抱きよせた。「……孝文」

「こういうときくらい、意地を張らないで俺に頼ればいい。そうだろ? 夫婦なんだから」

 あったかい体温を感じて、体の力が抜ける。これまでひとりで耐えてきたし、これからもそのつもりだった。けれど、彼に守られるこの腕の中が心地いい。もう、ひとりで耐えなくていいと思い、彼に身をゆだねた。私が彼の背中に手を回すと、私に回された彼の手に入った力が強くなる。

「一緒にいてやるから」

 いつになく優しい孝文の言葉が耳に心地よい。嬉しいはずの私の口から出たのは、可愛さとはかけ離れていた。
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