クールなCEOと社内政略結婚!?

「ソファに寝かせるの、可愛そうだから一緒に寝ていいよ」

　恥ずかしくて、素直にありがとうが言えないひねくれた言葉に、孝文がかすかに笑った。

「そういうことに、しといてやる」

　髪を撫でる手が優しくて、感じる体温が温かくて、近くから聞こえる呼吸が心地よくて。私は抱きしめられているドキドキとともに、守られることの安らかさを同時に感じている。

　孝文は『夫婦として前に進もう』と言った。そのためには、私はもう少し素直にならなくてはいけない。

　彼の胸に額をつけたまま、私は今の気持ちを孝文に伝えた。

「私ね……孝文とこうしてるの、嫌いじゃないよ」

　もっとましな言い方があるだろうと自分でも思う。しかし、今の私にはこれが精一杯だった。

「そうか」

　短い返事だったけれど、優しい声だった。

　激しい雷はまだ続いていたけれど、この時の私は彼の腕の中、やすらぎの中でゆっくりと瞼を閉じたのだった。