クールなCEOと社内政略結婚!?
 ふと瞼にかかる、温かい吐息を感じて目を開く。そこにはいつもの朝の光景とは違い、綺麗な男の寝顔があった。

 一瞬驚いて、ハッと息をのんだけれど、すぐに昨日の事を思い出した。あのまま、孝文の腕の中で眠ってしまったんだ。

 なんだか、寝顔はよく見るなぁ。

 そういえばこんなふうに間近で彼の顔を見るのは、寝ているときだけかもしれない。

 いつもはキチンと整えられている前髪が無造作に顔にかかっている。光にかざすとキラキラと光る色素の薄い髪の毛。触り心地を確かめたくなって孝文を起こさないように手を伸ばした。

 あれっ……?

 触れようとして伸ばした左手の手首に、見慣れない輝きを目にした。驚いて顔の前に持ってくると、小さな一粒のダイヤが付いたブレスレットだ。デザイン自体はシンプルだけど、カットが工夫されていてどの角度から見ても美しかった。

 孝文からの誕生日プレゼントだ。そう思うと、より一層輝きが大きくなったのは気のせいだろうか。

 せっかくなら面と向かって渡してくれればよかったのに……。そう思ったけれど、また可愛くない態度を取ってしまいそうだ。

 体を孝文の方に向けると、彼はまだ気持ちよさそうに眠っていた。その寝顔に「ありがとう」と小さな声で呟き、彼の前髪にそっと触れた。
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