クールなCEOと社内政略結婚!?
『まぁ、それならいいけど』

 しかし私の答えに俊介は不満そうだった。前から心配性でよく世話をやいてくれていたけれど、ここのところ拍車がかかっているような気がする。

 私は俊介を安心させようと、明るく話をまとめた。

「もうしばらく日本にいるんでしょ? 次は私がおごるから。じゃあね……ひっ」

 電話を切った途端、背後から肩を掴まれる。驚いて振り向くと、このフロアにいないはずの人物でもう一度
「ひっ」と驚いた。

「旦那の顔見て、それはないだろう?」

 孝文が不満気にこちらを軽く睨む。

「仕方がないじゃない、驚いちゃったんだから」

 急に現れて、いきなり不機嫌になられてもこっちが困る。

「それより、こんなところで話かけてきて、誰かに見られたらどうするの?」

「あ? 別に俺は困らないけど」

 何度も言っているが、私が困るんだってば……。

 焦っている私と、余裕の孝文。私たちはいつもこんなだ。

 しかし、こんなところで言い争いをしていて誰かに見られても困る。社内の噂の伝わる速度は光の速さ並みなのだ。うっかりは許されない。

「遅くなるから顔見に来たら、浮気の電話してるお前を見つけたんだ」

「な、浮気なんて人聞きの悪いこと言わないでよ。それに、孝文が遅くなるのはいつものことなのに、どうして今日に限って言いに来たの?」

 顔見に来たなんて……。

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