クールなCEOと社内政略結婚!?
「たまには夫婦らしいことしとかないと、自覚がないみたいだからな、奥さん」

「な、なに言って……」

「なんなら、もっと夫婦らいしことする？」

　一歩近づいてきた孝文から慌てて距離を取る。警戒する私を見て、肩を揺らし楽しそうにしている。からかわれているとわかっていても、ついつい意識してしまう。

「バカなこと言ってないで、さっさと仕事に戻ってよ」

「社長に向かってでかい口叩くんだな」

　あ、そうだった。立場をわきまえていないのは私だ。職場では、お互い他人同士でと提案したのは私なのに。

「じゃあ、行くから。これからちょっと忙しくなるから、数日帰りが遅くなる。なんかあれば連絡しろよ」

　私の頭をポンと叩くと、その手をポケットに入れて歩いて行った。

　本当にそれを伝えに来ただけなの？

　少しからかっただけで去っていく孝文の背中を見ていると、自然と頬が緩んだ。こういう些細なやりとりが、わたしたちふたりの関係を築いていくのだろう。

　私は緩んだ顔のままデスクに戻ると、残りの仕事を片付けた。ときどき私の頭をポンっと叩いた孝文のことを思い浮かべながら。

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