クールなCEOと社内政略結婚!?
③運命の相手 SIDE 孝文
「お前が俺の運命の女だ」
そう言いきって、あさ美を見るとソファにもたれかかって、スースーと寝息をたてていた。
「結構大事な話したんだけど?」
がっくりきて眠るあさ美の鼻の先をつまむと、一瞬顔をしかめたがまたそのまま眠りについてしまった。
……まあいい。チャンスはいくらでもある。
いつか自分の気持ちをあさ美に伝えよう。俺たちは夫婦なんだから、焦ることはない。
俺は彼女を抱き上げると先ほどまでふたり横になっていたベッドに、もう一度あさ美を運んだ。
気まぐれな猫のように体を丸めて眠るあさ美を見ていると、初めてコイツに出会った時のことを思いだした。
コイツ自身は、会社のエントランスでぶつかった時が初対面だと思っていたようだが、それは違う。入社試験の最終面接で担当官のひとりをしたのが俺だ。
当時はまだ親父が急逝する前で、俺も一介の役員だったから仕方がないのかもしれないが、あさ美が一ミリも覚えていないと知って少なからず落胆したのは、悔しいから本人には絶対言わない。
俺は、あんなに印象に残っているのに。