クールなCEOと社内政略結婚!?
「そろそろ意地を張り合うのはやめないか？」

　まさか向こうから歩み寄ってくるとは思ってなかったので正直驚いたが、私も孝文と同じ気持ちだ。いつまでも今の状況でいいわけない。

「うん……そうだね」

　素直に返事をした私を見て、孝文がほっとしたように見えた。それだけでそれまで私の中にあった怒りやモヤモヤが一気に鎮まる。

「ちゃんと話をしよう。店を予約してあるから遅れないように来いよ。俺もその時間には仕事終わらせて行くから」

「うん、わかった」

　そう答えた私の腕を孝文が強く引いた。彼の顔が近づいてきて私が目を閉じようとした瞬間、エレベーターの扉が開いた。

　一階に止まったままだったの、忘れてた！

　慌てて飛びのいた私の心臓は、いまだかつてないほどドキドキと音を立てていた。しかしそんな私を放置して、孝文はサッサとエレベーターを降りてしまう。乗り込んできた社員に「降りないんですか？」と聞かれて、慌てて飛び降りた。

　振り返って閉まるドアを見て思い出した。

――私、上に行くんだった……。
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