クールなCEOと社内政略結婚!?
「宗次さん、ちょっといい?」

 十六時半を少しすぎたころ、私は雅さんにミーテイングスペースに呼び出された。もしかしたら、定時後と言っていた打ち合せを前倒ししてくれたのかもしれない。

 私は呼ばれるまま彼女について行くと、扉が閉まった途端本題を切りだされた。

「今日、宗次さんが会うのって、孝文でしょう?」

「え? どうして知って……」

 しまった……慌てて口を抑えたけれどもう遅い。

 そんな私を見て、雅さんが肩を揺らして笑った。

「あなたって本当に正直な人ね。家族だなんてうそまでついて、そんなに私に隠したかったの?」

 家族というのはうそじゃない。けれど、それを話すわけにはいない。私は口を閉ざした。

「まぁ、どっちでもいいわ。待ち合わせの相手が孝文ならかわいそうだから、おしえてあげたほうがいいと思って呼び出したの」

「かわいそう? どうしてですか?」

 にっこりと笑った顔はいつもの雅さんの笑顔とは違っていた。その瞳に私に向ける敵意を感じる。

「彼は今日、私と会うのよ。だからあなたの元にはいかないはず」

「そんなはずありません」

 朝、エレベーターの中の孝文の言葉を思い出す。私との時間をとってくれると言っていた。
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