クールなCEOと社内政略結婚!?
「否定したい気持ちもわかるけど、それが事実なのよ。彼はあなたよりも私を取るわ。絶対にね」


「雅さん、私と彼が会うってわかっていたんですか？」

「そうよ。だからあえて今日誘ったのよ、大事な用があるって」

　雅さんの自信あふれる態度に、だんだんと不安になってくる。

　だけど孝文は私と話し合いたいと言ってくれた。だから今日だけは私と同じように何を置いても私の元に駆けつけてくれるはずだ。

「でも、孝文は仕事を終わらせて来るって約束してくれました。私はそれを信じます」

「そう、それはあなたの勝手だから好きにするといいわ。残念な思いをする前に忠告しておこうと思っただけだから」

　あたかも、彼女の思惑通りに孝文が動くとでも言いたそうだ。それでも孝文が来ると言った以上、私は彼を待つつもりだ。

「それでも、私は彼を待ちます。失礼します」

　すでに時計は十八時半、終業時刻は過ぎている。私は雅さんを置いてミーティングブースを出て、バッグを掴むとエレベーターに向かった。

　普段ならば仕事だと言われれば、諦められるだろう。けれど今日だけは私にとって特別な日だった。孝文にとっても同じであってほしかった。

　私と雅さんを天秤にかけるような人ではないとわかっている。けれど信じたいと思う気持ちと、不安とが同時に押し寄せてきて潰れてしまいそうだ。

　私はズキズキと痛む胸を抑えて、孝文との待ち合わせ場所に向かった。
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