クールなCEOと社内政略結婚!?
「それに俺が守るのは、佐々木じゃなくてあさ美、お前だ。だから今回の話はこれでおしまい。佐々木も常識ある大人だ。これ以上は何もないとは思うが、何かあったら俺に一番に相談すること、わかったか?」

 さっき冗談を言っていた顔つきとは違い、その真剣さに胸がいっぱいになる。ここまで私のことを思ってくれていたなんて。

 本当の夫婦として歩き出したばかりだけれど、孝文の“守る”という言葉に嬉しさがこみ上げてきた。

「わかった、一番に孝文に話すね」

「わかったなら、それでいい。しっかし、朝っぱらから疲れた。今日は一日オフだし、部屋にもどって一眠りするか」

「えー! せっかく休みなら、デートしよう」

 いつも忙しい孝文が休みだなんて、次はいつになるかわからない。私は彼の腕を引っ張った。

「めんどくさい。それより俺と部屋で一緒に寝よう」

 大きな体を屈めて、私の耳元で意味深に誘う。

「ね、寝るって、ちょっと何言って」

 孝文の息がかかった耳元に熱がこもり、慌てて距離をとった。そんな私を見て孝文は声を上げて笑った。

「お前、何考えてんだよ。スケベ」

「す、スケベって! 酷い!」

 怒った私を見て、ますます楽しそうに声をあげて孝文が笑う。ひとしきり笑ったあと、ふくれっつらの私に手を伸ばした。

「ほら、どこに行きたいんだ? 仕方ないからつき合ってやる」

「本当に?」

「早くしないと置いていくぞ」

 歩き出した孝文の手を逃がさないように、ギュッと握った。それを見て笑った孝文の顔が優しくて、ふたりを穏やかな空気が包んだ。
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