クールなCEOと社内政略結婚!?
第六章
①憧れと失望
九月――。まだ残暑が厳しい時期なのに、すでに来年の春のコレクションについての会議が行われる。
あの日以来、心配していた雅さんとの関係は、私情を挟むことなくそれまでと同じような上司と部下としてやってきている。
ふたりっきりになるのは、気まずいのでなるべく避けてはいるけれど、お互い大人だ。一定の距離感をたもちつつ仕事に没頭する日が続いた。
気にならないと言えばうそになるけれど、私たちの結婚の事もだまってくれている雅さんの気持ちを考えると、気まずいなどと言っていられない。
「もう、暑すぎて嫌になっちゃいますね。こんななかで春モノのデザイン決定するなんて、変な感じですよね?」
会議室の隣の椅子にはいつもどおり梨花ちゃんが座っていた。クーラーが入っている室内だったけれど、さっきまで外出していた梨花ちゃんは汗を引かせようと、資料でパタパタと扇いでいた。
「暑いのはわかるけど、お行儀悪いよ」
「はい。でもあと少しだけ……」
「あ、ほら始まるよ」
私の声に梨花ちゃんが姿勢を正した。私も背筋を伸ばして前を向く。
今回、私が提出したデザインは三種類。そのうちひとつはかなり自信のあるものだ。
大学時代からずっとあたためてきたデザインで、今回やっと納得するものが出来上がった。スケッチの段階で孝文が見て「いいな」と言ってくれたそのデザインを、今回の会議に提出していた。
実は母をイメージしてデザインしたウエディングドレスで、これまで納得したものが出来なかったのに、孝文との結婚生活が順調で幸せなおかげなのか、自分でもおどろくほど理想に近いデザインができた。
あの日以来、心配していた雅さんとの関係は、私情を挟むことなくそれまでと同じような上司と部下としてやってきている。
ふたりっきりになるのは、気まずいのでなるべく避けてはいるけれど、お互い大人だ。一定の距離感をたもちつつ仕事に没頭する日が続いた。
気にならないと言えばうそになるけれど、私たちの結婚の事もだまってくれている雅さんの気持ちを考えると、気まずいなどと言っていられない。
「もう、暑すぎて嫌になっちゃいますね。こんななかで春モノのデザイン決定するなんて、変な感じですよね?」
会議室の隣の椅子にはいつもどおり梨花ちゃんが座っていた。クーラーが入っている室内だったけれど、さっきまで外出していた梨花ちゃんは汗を引かせようと、資料でパタパタと扇いでいた。
「暑いのはわかるけど、お行儀悪いよ」
「はい。でもあと少しだけ……」
「あ、ほら始まるよ」
私の声に梨花ちゃんが姿勢を正した。私も背筋を伸ばして前を向く。
今回、私が提出したデザインは三種類。そのうちひとつはかなり自信のあるものだ。
大学時代からずっとあたためてきたデザインで、今回やっと納得するものが出来上がった。スケッチの段階で孝文が見て「いいな」と言ってくれたそのデザインを、今回の会議に提出していた。
実は母をイメージしてデザインしたウエディングドレスで、これまで納得したものが出来なかったのに、孝文との結婚生活が順調で幸せなおかげなのか、自分でもおどろくほど理想に近いデザインができた。