クールなCEOと社内政略結婚!?
ハッとして、ぶつかったその〝なにか〟を確認する。
私がぶつかった胸のあたりを、不機嫌そうに片手で払っている。見るからに高級そうな仕立てのいいそのスーツは、我が社の高級ブランドのもので間違いない。
「も、申し訳ございません」
私は相手の顔を見るなり、深く深く頭を下げた。
どうしてこうもツイていないのだろうか。
脇に変な汗が滲むのを感じながら、顔を上げた。
本来ならばため息が出るほど整っているはずの顔を歪ませ、私を見下ろすように冷たい視線を投げかけるその男は……この会社、株式会社アナスタシアの社長、浮田孝文(うきたたかふみ)だった。
すぐに屈んで、あたりに散らばった紙を拾い集める。スケッチブックに手を伸ばした瞬間、それは私の目の前で社長の手に連れて行かれてしまう。
「……あっ」
社長は厳しい顔のまま、パラパラとスケッチブックをめくっている。
「ダメだな」
「え?」
聞きづらくて、もう一度聞き返したことを次の言葉を聞いて後悔する。
「まるで、ダメだ。中学生の落書きレベル」
「……っう」
吐き捨てるように言われて、ぐうの音も出ない。この春やっとデザイナーへ昇格した私が、会社の最高責任者の意見に逆らえるわけがない。
しかも、相手は「これもダメ」「あぁ、センスのかけらもない」などと、これでもかというくらい辛辣な言葉を並べたてながら、まだ私のスケッチブックをめくり続けていた。
……もう、そんなにみんなの前でつるし上げなくたっていいじゃない。
自分に天賦の才能があるとは思っていない。けれど、そのぶん努力でカバーしてきたつもりだ。それを頭ごなしに否定されては、立つ瀬がない。
かろうじて自分がかきあつめた、デザイン画を胸に抱いて、彼の評価に耐え忍んでいたとき、思わぬ言葉が耳に入ってきた。
私がぶつかった胸のあたりを、不機嫌そうに片手で払っている。見るからに高級そうな仕立てのいいそのスーツは、我が社の高級ブランドのもので間違いない。
「も、申し訳ございません」
私は相手の顔を見るなり、深く深く頭を下げた。
どうしてこうもツイていないのだろうか。
脇に変な汗が滲むのを感じながら、顔を上げた。
本来ならばため息が出るほど整っているはずの顔を歪ませ、私を見下ろすように冷たい視線を投げかけるその男は……この会社、株式会社アナスタシアの社長、浮田孝文(うきたたかふみ)だった。
すぐに屈んで、あたりに散らばった紙を拾い集める。スケッチブックに手を伸ばした瞬間、それは私の目の前で社長の手に連れて行かれてしまう。
「……あっ」
社長は厳しい顔のまま、パラパラとスケッチブックをめくっている。
「ダメだな」
「え?」
聞きづらくて、もう一度聞き返したことを次の言葉を聞いて後悔する。
「まるで、ダメだ。中学生の落書きレベル」
「……っう」
吐き捨てるように言われて、ぐうの音も出ない。この春やっとデザイナーへ昇格した私が、会社の最高責任者の意見に逆らえるわけがない。
しかも、相手は「これもダメ」「あぁ、センスのかけらもない」などと、これでもかというくらい辛辣な言葉を並べたてながら、まだ私のスケッチブックをめくり続けていた。
……もう、そんなにみんなの前でつるし上げなくたっていいじゃない。
自分に天賦の才能があるとは思っていない。けれど、そのぶん努力でカバーしてきたつもりだ。それを頭ごなしに否定されては、立つ瀬がない。
かろうじて自分がかきあつめた、デザイン画を胸に抱いて、彼の評価に耐え忍んでいたとき、思わぬ言葉が耳に入ってきた。