クールなCEOと社内政略結婚!?
「どうして、もっと強く言ってくれなかったの? 孝文は社長なんだからどうにでも出来たでしょう?」

「そんな単純な話じゃないんだ」

 溜息混じりの言葉に、彼の苦悩もわかる。元々孝文が地位や権力を振りかざして一方的に話しを進めることはしない。相手が納得しないままでは物事が上手く運ばない事を知っているからだ。

 でも今回はわがままだと言われても、あのデザインをすぐに私の元に取り戻して欲しかった。

「あれは私のなのに……」
 
 
 子供みたいに駄々をこねるような言葉しか出てこない。一体どうしてこんなことになってしまったのだろう。

 孝文の手が伸びてきて、私の頭を優しく撫でた。

「俺がちゃんとするから、お前は少し待ってろ」

「待ってろって、明日から……いや、今日からもうあのデザインを元に仕事が始まっているんだよ。そんなこと孝文だってわかってるよね?」

「あぁ」

「だったら――」

 私の言葉を孝文が遮った。

「わかっていても、すぐにはどうにもできないことがあるだろう!」

 イライラと感情をぶつけるような孝文の言い方に、私の不安と怒りが爆発した。

「じゃあ孝文はあのままこのドレスが、雅さんのデザインとして作られても仕方がないと思ってる? でもそうか、無名の私なんかの名前よりも業界でも有名な雅さんの名前の方が、あのドレスの価値もあがるってもんだよね」
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