クールなCEOと社内政略結婚!?
「お前それ本気で言ってるのか?」

 孝文の低い声に失望の色が見て取れた。
 
自分でも嫌味なことを言っているのはわかっている。けれど自分を止めることができない。悔しくて唇を噛む。そんな私に孝文が突き放すような言葉を投げかけた。

「今のお前には、何を言っても無駄だ。もう少し冷静になるまで、このことは俺にまかせておけ。いいな」

 任せるも何も、私じゃ何も出来ない。私ひとりあれが私のデザインだと言ってもきっと誰も信用してくれない。実績も名声もある雅さんと私を比べたら、みんな向こうの味方をするに決まってる……。だからこそ――。

「孝文には味方になってほしかったのにっ!」

 声を上げ立ち上がり、部屋に向かう。そのとき足がテーブルの上においてあったスケッチブックに触れて、デザイン画がバラバラと広がった。

 けれど私はそれを拾うことなく、自室に向かい扉を閉め、ベッドに横たわる。
 
 枕に顔をつけるとそれまで、耐えていた涙が頬を伝った。
 
 どうしてこんなことになってしまったのだろう。あのデザインは誰がなんと言おうと私のものなのに。もちろん自分のデザインが盗用されたことも悔しい。それに加えあんなに尊敬して憧れていた雅さんが、あんな酷いことをしたという事実が私を更に傷つけていた。

 その夜、嗚咽で息をするのも苦しくなっても、私は泣き続けた。

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