クールなCEOと社内政略結婚!?
「何も言わないってことは、あなたもわかってるってことよね?」

 何も反応を示さない私をよそに、雅さんはまた話を続けた。

「孝文は経営者よ。それも優秀な。彼ならどっちを選ぶかしらね……」

 勝ち誇ったような笑顔に、嫌悪感がこみ上げてきた。

「あなた孝文のこと何にもわかってないのね。彼は会社のためなら冷酷な判断を下す男よ。何かを犠牲にして今までこのアナスタシアを守ってきたの」

「犠牲……」

 たしかにこれだけの会社を守って、成長させていくためにはそういう判断が必要になってくる場面もあったかもしれない。

 犠牲――今回はあのデザインがその犠牲になるということだろうか……。

 しかし雅さんの言ったことが、真実のように思えてきた。

 もし孝文が私の事を思うなら、なんとしても雅さんと話しをつけてくれたはずだ。けれど彼はそれをしなかった。

 考えてみれば業界でも注目されている雅さんのスキャンダルとなれば、会社の信用も失墜してしまう。経営者としては避けたいはずだ。
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