クールなCEOと社内政略結婚!?
 ここまでしなくても、最初から相手にされてないんじゃない?

 脳内のもうひとりの声を無視して、ジロジロと彼を観察した。そのうち向こうから気まずくなって視線をはずすと思っていた。

 けれど、どうしてなのか社長も私をじっと見つめたままだ。言葉もなくふたりずっと見つめ合う。なんだか先に目を逸らすと負けのような気がして、私もじっと社長を見つめ返す。

「あれ? なぁんだ。もうふたりそんなに見つめ合う仲になっちゃった?」

「ち、違うっ!」

 とんでもないことを言い出した父を、瞬時に睨みつける。しかし、そんなのはどこ吹く風。そのまま話を続ける。

「いや~よかった。こんな短い時間でお互いを求めあうようになるなんて、運命だね。そう思わないか、あさ美?」

「思わないし、求めあってない」

「あはは……そういえばあのセリフ言いたいんだけど、言っていい?」

 ウキウキした父の顔が恨めしくて仕方ない。

「どうぞ! どうせダメだって言っても言うんでしょう?」

 それでなにを言うつもりなんだろう?

「そう? じゃあ、遠慮せずに……」

 父がコホンと芝居じみた咳をした。

「後は、お若いおふたりで――あ、そうだ子作りは早いほうがいいと思って、ホテルの部屋もとってあるから。パパ気が利くだろう?」

 にっこりと笑う父に目を見開いて驚くことしかできない。

――もう消えてください。
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