クールなCEOと社内政略結婚!?
 ……ダメだ。これ、私の周りにいる人みんなダメな人だ。

 っていうか、社長は子作り宣言するってことは、この見合い話を進めるっていうこと? 見合いの席での私のあの態度を見ていれば、普通の人なら断るに違いないのに。

 それに彼から、今日一度だって好意的な視線を向けられた記憶がない。それなのに……それなのに、子作りOKっていったいどういうことなの?

 絶望に打ちひしがれた私の足元がふらつく。慣れない草履のせいで体が大きく傾いた。

「あぶないっ!」

 俊介の声が日本庭園に響き、浮田社長の手が一瞬伸びてきたけれど、間に合わない。

 周りの景色がスローモーションで流れ、雲ひとつないぬけるような青空が目に入ったと思った瞬間……。

――バッシャーン

 大きな水しぶきが上がり、頭からそれを浴びる。池の中に見事に尻もちをついた私は、何が起こったのか理解できずに、手元で迷惑そうに泳ぐ鯉と見つめ合った。

 そんな私の耳に、最初に入ってきたのは、呑気な父の声だった。

「古池や、娘飛びこむ水の音」

 父の代わりに謝ります。松尾芭蕉さんごめんなさい。
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