クールなCEOと社内政略結婚!?
「……でも、これは悪くない」
つき返されたスケッチブックのページに描かれていたのは、さきほどまで昼休みを使いカフェで夢中になって描いていたデザインだった。
「え?」
思わず自分のしでかした失態を忘れて、はじかれたように社長の顔を見る。片方の口角がわずかに上がっている。
「悪くないと言ったんだ。センスだけじゃなくて耳も悪いのか」
そういって、私にスケッチブックを押しつけた社長は、側近の部下を引き連れてエントランスの真ん中を歩いて行く。
私は、頭を下げながら彼を見送った。
ふと、エントランスにある時計を確認すると、会議の時間を五分ほど過ぎていた。
「あぁー!」
私は声をあげると、今度は誰にもぶつからないように慎重にかつ急いで、エレベーターホールを目指した。
カツカツとヒールの音を響かせながら、さっきの出来事が脳内で再生される。
いくら社長だからといって、多くの社員が行きかうエントランスで、盛大なダメだしをするなんて酷い……そうは思うものの、最後に言われた言葉が心に残っている。
「悪くないかぁ……」
エレベーターに乗り込み、変わっていく階数表示を眺めながらポソリひとり呟いた。デザイン部のある六階に到着してエレベーターが開くと、私は現実に引き戻された。
「宗次、会議始めるぞ!」
フロアに戻るとすぐに声をかけられた私は、バッグをデスクの引き出しに押し込むと、書類一式を胸に抱え、会議室へと急いだ。
いつも通りの慌ただしいけれど、充実した毎日。それがいつまでも続くのが自分の人生だと思っていた。
それがほんの数日で、想像もしていない自体になろうとは、このときの私は思ってもみなかったのだった。
つき返されたスケッチブックのページに描かれていたのは、さきほどまで昼休みを使いカフェで夢中になって描いていたデザインだった。
「え?」
思わず自分のしでかした失態を忘れて、はじかれたように社長の顔を見る。片方の口角がわずかに上がっている。
「悪くないと言ったんだ。センスだけじゃなくて耳も悪いのか」
そういって、私にスケッチブックを押しつけた社長は、側近の部下を引き連れてエントランスの真ん中を歩いて行く。
私は、頭を下げながら彼を見送った。
ふと、エントランスにある時計を確認すると、会議の時間を五分ほど過ぎていた。
「あぁー!」
私は声をあげると、今度は誰にもぶつからないように慎重にかつ急いで、エレベーターホールを目指した。
カツカツとヒールの音を響かせながら、さっきの出来事が脳内で再生される。
いくら社長だからといって、多くの社員が行きかうエントランスで、盛大なダメだしをするなんて酷い……そうは思うものの、最後に言われた言葉が心に残っている。
「悪くないかぁ……」
エレベーターに乗り込み、変わっていく階数表示を眺めながらポソリひとり呟いた。デザイン部のある六階に到着してエレベーターが開くと、私は現実に引き戻された。
「宗次、会議始めるぞ!」
フロアに戻るとすぐに声をかけられた私は、バッグをデスクの引き出しに押し込むと、書類一式を胸に抱え、会議室へと急いだ。
いつも通りの慌ただしいけれど、充実した毎日。それがいつまでも続くのが自分の人生だと思っていた。
それがほんの数日で、想像もしていない自体になろうとは、このときの私は思ってもみなかったのだった。