クールなCEOと社内政略結婚!?
「お前こそ、なに言ってるんだ? 見合いしたんだ。当り前のことだろう?」

 射るような視線を向けられて。思わず委縮しそうになる。けれど、ひるんでいる暇などない。

 婚姻届にはすでに、社長のサインが施されていた。

 本気なんだ……。

 いや、相手が本気だからと言って、私の気持ちが変わるわけじゃない。向こうが断らないなら、こっちから断るまでだ。

「あの、今日会ったばかりなのに、すぐに結婚なんておかしくないですか?」

 落ち着いて、言いくるめられないように相手を説得するように言葉をかけた。

「〝今日会ったばかり〟ではないだろう。少なくともエントランスで一度は接触している」

「あんなの〝会った〟内に入りません。詭弁です」

「間違いを訂正しただけなのに、随分噛みつくんだな」

 なぜだかおかしそうに肩を揺らし笑い始めた。しかし、そんな様子に私はますます腹立たしくなる。

「とにかく、こんなお見合いで結婚なんてばかげています。社長だって、こんな結婚おかしいと思うでしょう?」

「別に……いつかは誰かと結婚するんだろうとは思ってたから、それが今で相手がお前だった。ただそれだけ」

「ただそれだけって……」

 そんな相手と結婚する私の身にもなってよ。
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