クールなCEOと社内政略結婚!?
「いきなり得体の知れないオッサンから融資の申し出があったときは、びっくりしたけどな。調べたら結構でかい取引やってる会社だってわかって、融資をお願いすることにした。それが宗次さんとの出会い」

「お父さんの会社ってそんなに大きいんだ」

 これまで、父の事業のことにはほとんど興味がなかった私のつぶやきに社長が驚いた。

「お前、自分の父親のすごさわかってないのか?」

 私の前では、いつもあの調子なのだ。すごい人だなんて言われても全然ピンと来ない。

「確かに、お金には余裕があるんだとは思ってたけど、なんせいきなり私を引き取ったくらいだし。あ、もちろん社長なら調べてるんですよね? 私の生い立ち」

 私の質問に、無言でうなずく。

「でも、私は実際一緒に暮らしたこともないから、父の仕事についてそこまで意識したことないんです。以前、尋ねたときも『お金を右から左に受け流す仕事』とだけ答えてくれただけなので」

 そう答えた私の顔を見て、社長は信じられないという驚きの表情を見せた。

「もっと贅沢な暮らしがしたいとは思わなかったのか?」

「私にとっては、自分のやりたいことをやらしてくれるだけでも、贅沢でしたから」

 心無い親戚の間をたらいまわしにされる危機を救ってくれた。まともな教育をうけさせてくれた。それだけでも、私にとってはありがたいことだった。
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