クールなCEOと社内政略結婚!?
第二章

①今日から人妻

 ズキンズキンと痛む頭を抱えながら、いつもの電車で会社へ向かう。つり革につかまり、ガラスに映る自分の顔を見て、ため息が出た。

 ひどい顔。

 その一言がぴったりだった。休み明けの月曜日、私と同じように暗い表情を浮かべる人も多い。けれど、その中でも私がダントツ一位だと自信が持てた――そのくらいひどい。

 あのあと、帰宅してからずっと、見合いのことで頭がいっぱいだった。

〝明日まで待ってやる〟と偉そうに言われたけれど、待ったところで何も変わらない。こんな馬鹿げた見合い話を受けるつもりなど、毛頭ないのだから。

 けれどそのためには、社長をなんとか説得しなくてはならない。

……このひどい顔見れば、結婚あきらめてくれるだろうか。

 色々と考えたけれど自分の〝ひどい顔〟に頼りたくなるくらい、何も思い浮かばなかった。

 電車を降りて、改札を抜ける。いまだかつてないほど会社に向かう足取りが重い。しかし、仕事には行かなければ。

「どうかアイツの気が変わっていますように」

 最後は神頼みしかない。私は自分の願いが届くように空を仰いだ。

 真っ黒な雲に覆われた空から、雨粒がポツンと落ちてきた。神様の存在を否定するかのような光景に肩を落とした。

「本当に……ツイてないっ」

< 39 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop