クールなCEOと社内政略結婚!?
だったら、選ぶのはこの道しかない。
私は社長が手に持っていた、婚姻届を奪うように手に取り、壁に広げた。ポケットから会社の備品のボールペンを取り出すと『妻になる人』と書かれている欄に自分の名前を書く。一瞬〝妻〟という字にひるみそうになるけれど、一気に書き上げた。
壁を使って書いているせいで、筆跡ががたがたになったが、そんなことは今どうでもよかった。こんな投槍な形でこの書類にサインする日がくるとは、思てもみなかったけれど。
サインを終えた私は、乱暴にそれを社長に付き返した。
「これで満足ですか?」
私の挑むような目を見て、ニヤリと笑う。
「あぁ。たったこれだけのことにどれだけ時間がかかるんだ。まったく」
社長にとっては〝たったこれだけのこと〟なのかもしれない。けれど私にとっては、人生が一変する出来事だ。悩んだ時間はこれでも短いはずだ。
「満足したなら、帰ります」
「あぁ。もう転ぶなよ。嫁が傷だらけなのは見ていられない」
誰が嫁だっ!
これまで以上におもいっきり睨みつけたが、そんなのもろともせずに肩をすくめてみせる相手に、もうこれ以上話すことはないと思い、私は歩き出した。早足で転ばないように、階段を下りた。響く足音には私の人生最大の怒りがこもってるような気がする。
普通なら、好きになって、思いを通わせて、時間をかけて愛をはぐくみ、将来を誓い合った先にあるはずの婚姻届。
そのすべてを取り去ってサインしたそれに、どんな意味があるというのだろう。
私は社長が手に持っていた、婚姻届を奪うように手に取り、壁に広げた。ポケットから会社の備品のボールペンを取り出すと『妻になる人』と書かれている欄に自分の名前を書く。一瞬〝妻〟という字にひるみそうになるけれど、一気に書き上げた。
壁を使って書いているせいで、筆跡ががたがたになったが、そんなことは今どうでもよかった。こんな投槍な形でこの書類にサインする日がくるとは、思てもみなかったけれど。
サインを終えた私は、乱暴にそれを社長に付き返した。
「これで満足ですか?」
私の挑むような目を見て、ニヤリと笑う。
「あぁ。たったこれだけのことにどれだけ時間がかかるんだ。まったく」
社長にとっては〝たったこれだけのこと〟なのかもしれない。けれど私にとっては、人生が一変する出来事だ。悩んだ時間はこれでも短いはずだ。
「満足したなら、帰ります」
「あぁ。もう転ぶなよ。嫁が傷だらけなのは見ていられない」
誰が嫁だっ!
これまで以上におもいっきり睨みつけたが、そんなのもろともせずに肩をすくめてみせる相手に、もうこれ以上話すことはないと思い、私は歩き出した。早足で転ばないように、階段を下りた。響く足音には私の人生最大の怒りがこもってるような気がする。
普通なら、好きになって、思いを通わせて、時間をかけて愛をはぐくみ、将来を誓い合った先にあるはずの婚姻届。
そのすべてを取り去ってサインしたそれに、どんな意味があるというのだろう。