クールなCEOと社内政略結婚!?
 エレベーターに乗り込み、変わっていく階数表示を眺めながら、第一声に何ていってやろうか悩んだ。しかし、高級マンションのエレベーターはすごく早くて、何も思いつかないうちに社長の部屋の扉の前に到着していた。人差し指を呼び鈴に伸ばした瞬間、いきなり扉が開いた。

――ゴツン

「痛い」

 あんなに色々考えたのに、社長に会った第一声がこれだなんて、情けなく思いながら額をさする。

「おい、気を付けろって言っただろ。どれだけ不注意なんだよ」

「社長が急に扉をあけたのが悪いとは思わないんですか?」

 ひとが痛い思いをしてるのだ、少しくらい申し訳ないと思ってもいいんではないだろうか?

「お前が、扉の前に立ってるのが悪い。いいから入れ」

 あぁ。結局何を言っても言い返されてしまう。私は諦めて、扉を抑え体をよけてくれた社長の促すまま、室内に足を踏み入れた。

「お邪魔します」

 一歩足を踏み出したが、ぐいっと肩を掴まれ、阻止される。

「違うだろう。挨拶から教えないといけないのか?」

「え? だって今ちゃんと〝お邪魔します〟って言いましたよね?」

 小さなころから挨拶だけはきちんとしてきたつもりだ。どうして咎められるのかわからない。
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