クールなCEOと社内政略結婚!?
 思ったよりも私のことを考えてくれているのかもしれない。いい意味での驚きを覚えた。

「いや、しかしいい顔してるな」

 社長はベッドに腰かけて、本格的にアルバムを見始めた。そこには過去の私が順番に並んでいた。

「これ、お前の母親?」

「あ、うん。綺麗でしょ?」

 自分の母親を自慢するなんて、一般的には恥ずかしいかもしれない。しかし私にとっては自慢の母だ。

「あぁ、宗次さんが惚れ込んだのも無理ないな」

 母親を褒められたことで、嬉しくなり私は社長と一緒にアルバムを覗き込み、解説をし始めた。

「これは幼稚園の入園のときで……これが芋掘り遠足で……」

 社長は意外にも私の解説を楽しそうに聞いてくれている。時々でてくる私の泣き顔や大笑いする顔を見て、顔を綻ばせた。

「今とあんまり変わらないな」

「そんなことないです。今は大人の女性ですから」

 子供の時から変わらないなんて失礼だ。

「いや、この常に全力で落着きない感じは、今とまったく同じだろう」

 そこを突かれると困る。確かに自分でも落着きのなさは自覚しているからだ。耐え切れない様子で笑い声を漏らした彼を、軽く睨んで視線を彼がもつアルバムに戻した。

 途中、それまで順調に進んでいたページを送る指が何度か後に戻って何か確認している。それは写真の日付が年単位で抜けていたからだろう。――母が亡くなった年は写真を撮る余裕もなかったのが原因だ。
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