クールなCEOと社内政略結婚!?
「あさ美さん、今日はたしか早く帰る日ですよね?」

「え?」

「お父様が帰国されるって、言ってませんでしたか?」

 私は急いで、卓上カレンダーを確認する。今日の日付に赤い丸がついていた。

「忘れてた……まずい」

 壁にかかっている時計を確認すると、終業時間を四十分すぎていた。急がないと、父との待ち合わせに遅れてしまう。

「教えてくれてありがとう。梨花ちゃん」

「もう、私は秘書じゃないんですからねっ! 後の仕事はやっておきますから、さっさと行ってください」

「今日は一日中、迷惑かけてごめんね。明日ランチおごる」

「今日だけじゃないですけどね。ランチ期待しておきます」

 デスクの一番下の引き出しに入れてある、バッグをひっつかんで、梨花ちゃんに手を振りながらフロアを後にした。



 父がニューヨークから帰ってくる、この日は――母の命日だった。


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