クールなCEOと社内政略結婚!?
「当り前っちゃ当たり前だけど、俺たちお互いのこと何にも知らないな」

 たしかにそうだ。本当にあら夫婦になる前にある程度の好みや生活スタイルを知っているはずだ。私たちのようにコーヒーのミルクの有無を結婚してからはじめて確認するなんてことはないだろう。

「飲めるだろう、つき合えよ」

「あ、うん」

 立ち上がろうとした私を、孝文が制して冷蔵庫に向かった。

「なんだ、これ」

 冷蔵庫を開けた孝文が、ラップに包まれた料理を発見したみたいだ。

「これ、俺の?」

「あ……えーと作りすぎちゃって、もうご飯食べた?」

「あぁ。基本的に俺の食事は作らなくていい。どうせ無駄になる」

「そう……」

 こう言われるのはどこかで予想していたはずなのに、やっぱりいい気分はしない。

 余計なことするんじゃなかった。

 落ち込んでいると、目の前にドイツ製の瓶ビールとグラス。それにラップに包まれたチキンステーキとポテトサラダが運ばれてきた。

「食べるの?」

「あぁ、俺のだろう?」

……食べるんだ。

 さっきの沈んだ気持ちがすごい勢いで急浮上してくるのがわかる。

「あっためようか?」

「いい。面倒だし。ほら、お前も」

 そう言ってグラスとビールを渡された。

「ありがとう」
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