クールなCEOと社内政略結婚!?
「オセロ?」

「そう。これならお前にもできるだろう?」

 リビングのローテーブルにオセロを置くと、孝文は二本目のビールを取ってきてソファに座り、私はその向かいに移動した。

 孝文が黒、私が白と石の色を決めて、早速ゲームを始めた。オセロなんて子供じみた……そう思っていたけれど、やり始めるとふたりとも思った以上に白熱する。真剣に考えてお互いの隙をつく。

 案外地味な手を使うんだな。これはもしかして勝てるかも。

 中盤に差し掛かるころ、ふとそんなことが頭によぎった。今のところ白の私のほうが有利だ。心のなかでニヤリと笑う自分がいる。

「なぁ、これただ勝敗を決めるだけじゃ面白くないよな」

 手元の石をカチャカチャと鳴らして、盤をみつめていた視線を私に向けた。

「これ、負けたほうが勝ったほうの言うことを何でも聞くっていうのはどうだ?」

〝何でも〟という表現が気になる。いつもなら慎重になる提案だったけれど、この時の私は勝機が見えていた。ひと泡ふかせるチャンスが来たと思い、ふたつ返事でOKした。

 ……しかし、まさかすぐに自分のこの決断に後悔することになるとは思ってもみなかった。

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