クールなCEOと社内政略結婚!?
「……ん」

 寝返りを打とうとしてなんだかうまくできずに、違和感を覚えた。

 そういえば、この枕こんなに固かったっけ?

 いつもと同じ枕のはずなのに、こんなに寝心地が悪かったっけ?

「ったく、寝るときくらい大人しくできないのか」

 すごく近い場所で声が聞こえて、パチッと目が覚めた。そして目の前にある孝文の迷惑そうな顔が目に飛び込んできた。

「ひっ……」

 こういうとき、少女漫画だったら「きゃぁ」なんて可愛い声がでるんだろうけど、現実はそんなことはない。戸惑い、固まってしまった私を、孝文が抱き寄せた。

 頬が温かい彼の素肌に触れ、いつも彼からただようムスクが一段と強く香る。彼の腕に包まれたまま私は記憶を整理した。

 たしか、オセロに負けて彼を膝枕していたはずだ。それなのに、今どうして私が腕枕されているのだろう。

 努めて冷静になろうとしているのに、孝文がそれを邪魔する。滑らかな心地よい体温の素肌。頼りがいのある逞しい腕。そして私の頬をかすめる吐息。全身がこれでもかと言うくらい彼に反応する。心臓が痛いくらいに脈打っていて、体中が熱い。

 ふと、彼の腕に力が入り足を私の体に絡めてきた。さっきよりもずっと近くに彼を感じる。そうずっと近くに。
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