クールなCEOと社内政略結婚!?
 普通の夫婦ならごく当たり前のことだろう。でも私たちは違う。改めてこの結婚はイレギュラー尽くしだと、思い知った。

「なぁ、俺着替えるんだけどまだそこにいるつもり? 見たいって言うなら見せるけど」

 そう言ったときには、すでに孝文はスウェットに手をかけていた。

「へ、変態!」

 私は掴んだ枕を思い切り孝文に投げつけて、慌てて部屋の外に出た。部屋の中からは孝文の笑い声が聞こえてきたけれど、私は自分の部屋に駆けこんだ。

「あぁ、もうどうしてこんなことになるのっ?」

 慌てて逃げてきてしまったけれど、いつかは彼と一緒にあのベッドに寝る様になる日がくるのかもしれない。ふと先ほどの彼の腕のなかでのことを思い出すと、胸がきゅっと音を立てた。

 その甘やかな感覚を持て余しながら、私は仕事に遅れないように自分も朝の準備をはじめたのだった。
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