クールなCEOと社内政略結婚!?
 親戚もいたけれど……彼らは母の死を悲しむよりも、私というお荷物を誰が引き取るか、母の亡骸の前で言い争っていた。

 当の本人の私は、それをどこか他人事のように聞いていたのを今でも覚えている。

「うちだって、ダメよ。主人の給料がまた下がって、自分たちが食べていくだけで精一杯ですから」

「そうだ。遺産もないのに、誰がこんな面倒事ひきうけるか」

「うちには、年頃の息子がいるから無理よ。なにか間違いがあっては困るもの」

「たしかに、どこの馬の骨かわらかん男の子を産む母親だからな。血は争えん」

 そんな大人たちの勝手な会話を、遮る声が部屋に響いた。

「馬の骨とは、ずいぶん失礼ですね」

 低い声とともに登場したのは、背の高い男性だった。外の光を背後にまとった男の顔がよく分からず、目を細めた。今まで一度も見たことのない人だ。

「誰だいったい? 何しに来た?」

 私の疑問を親戚の男性が代わりに聞いた。

「私は、宗次護(むねつぐまもる)。あさ美の父親です」

 その衝撃の発言に、周りがあっけにとらてれいる隙に、男は棺桶に駆け寄った。

「なお美ぃいいぃいいいい」

 そして人目もはばからず、今と同じようにいや、今以上にボロボロと涙を流しながら、母の亡骸を抱きしめたのだった。

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