クールなCEOと社内政略結婚!?
雅さんの話を聞くという目的が果たせそうになくて肩を落とした。そして、孝文の手元にあるスケッチブックに目が止まる。
「もう、また勝手にっ!」
いくら社長だからって、デザイナーの命であるスケッチデザインをこうも毎度毎度無断で見てもいいものだろうか?
その手から取りあげると、何ページか気になるデザインにコメントが残されていた。
『お遊戯会のドレス』とか『くそダサい』とかそれはもう散々な言い方で。でもその中に時々ある『ここはいい』だとか『俺は好き』だとかいうコメントを見ると嬉しくなってしまう。まさにこれが飴と鞭というやつか。
そしてゆっくりと最後のページをめくったとき、一瞬私の呼吸が止まった。
「これって……私?」
紙の上を見つめると、胸がドキドキして息苦しさを感じる。
開いたスケッチブックに描いてあったのは、まぎれもなく私だった。おそらくここで眠りこけていた間に彼が描いたものだ。
スケッチブックの私は、満面の笑みを浮かべていた。温かいタッチで描かれた私。彼から私はこんなふうに見えているのだろうか?
いつもイジワルでへこむことしか言わない彼がこんな素敵な表情の私を描くなんて……。
嬉しい。
心に自然とその言葉が浮かんできた。それと同時になんだか恥ずかしくなる。ただのスケッチなのに、その中に彼の好意が込められていると思うのは、私の勘違いだろうか?
恋愛スキルの低いせいで、こんなことにさえ、ドキドキしてしまう自分が子供じみているような気がして、急に恥ずかしくなってしまったのだ。
慌てた私は、テーブルの上に広げていた資料とパソコンを片付けると、スケッチブックを手に持って、部屋へと逃げ込んだ。
ふわふわと嬉しい気持ちが体を駆け巡る。スケッチブックをきちんと引き出しにもどすと、幸せな気分のまま眠りについた。