兄弟ものがたり
1 三人
「おい和人、おれのタオル知らないか?」
「知るか。俺に訊くな」
「二人共、どこかでお父さんの携帯見なかった?」
父親と大学生になる息子が二人の三原家の朝は、いつだって慌ただしい。
呑気に味噌汁を啜る和人の回りを、一人はタオルを捜して、もう一人は携帯電話を捜してうろうろと歩き回る。
「試合の時はあのタオルでないと、気分が上がらないんだよな……」
「昨日の夜は、確かにこの辺に置いたと思ったんだけど……」
ぶつぶつぼやきながら、ぐるぐるとテーブルの周りを回る二人。スーツとジャージが、和人の目の前を交互に通り過ぎていく。
二人が捜し物をしているのはいつものことなので、そんな二人を無視して和人は黙々と朝食を食べる。
すると、チャイムが鳴った。
「おはようございまーす!佐川でーす」
外から響いてくる明るく威勢のいい声に、いち早く反応を示したのはタオルを捜していたジャージ姿の陽仁で、顔を上げるなり勢いよく和人の方を振り返る。
「知るか。俺に訊くな」
「二人共、どこかでお父さんの携帯見なかった?」
父親と大学生になる息子が二人の三原家の朝は、いつだって慌ただしい。
呑気に味噌汁を啜る和人の回りを、一人はタオルを捜して、もう一人は携帯電話を捜してうろうろと歩き回る。
「試合の時はあのタオルでないと、気分が上がらないんだよな……」
「昨日の夜は、確かにこの辺に置いたと思ったんだけど……」
ぶつぶつぼやきながら、ぐるぐるとテーブルの周りを回る二人。スーツとジャージが、和人の目の前を交互に通り過ぎていく。
二人が捜し物をしているのはいつものことなので、そんな二人を無視して和人は黙々と朝食を食べる。
すると、チャイムが鳴った。
「おはようございまーす!佐川でーす」
外から響いてくる明るく威勢のいい声に、いち早く反応を示したのはタオルを捜していたジャージ姿の陽仁で、顔を上げるなり勢いよく和人の方を振り返る。
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