兄弟ものがたり
守ってやるなんて、そんな恥ずかしいことは思っていても言えないから、和人は「バーカ。自分の身は自分で守れ」と返した。
それに真悠が頬を膨らませて反論しようとした時、勢いよくボールが打ち出される音が聞こえた。
真悠は慌てて振り返り、和人もコートの方に視線を動かす。
コートの近くにいる人達が、なにやらどよめいている。そこに「よっしゃあー!場外ホームラン」という陽仁の嬉しそうな雄叫びが響いた。
よく見ると、コートの中で唖然とする相手プレーヤーをよそに、全力でガッツポーズをする陽仁の姿が見えた。
「あの、バカ……」
「すごいね、はるくん本当にホームラン打っちゃった!それも場外ホームランだって」
可笑しそうに、楽しそうに、真悠が笑って言う。
和人は完全に呆れていたけれど、コートの方からはちらほらと拍手が起こり始めている。
おそらく、陽仁があんまり喜んでいるから、みんな雰囲気に呑まれたのだろう。
笑顔で駆け寄る真悠に、陽仁はやってやったぞ!と言わんばかりにラケットを高く掲げ、遅れてやってきた和人には、満面の笑みでぐっと親指を立ててみせる。
当然、テニスに場外ホームランなんてルールはないので、陽仁は誰よりもいい笑顔で初戦敗退した。
***
それに真悠が頬を膨らませて反論しようとした時、勢いよくボールが打ち出される音が聞こえた。
真悠は慌てて振り返り、和人もコートの方に視線を動かす。
コートの近くにいる人達が、なにやらどよめいている。そこに「よっしゃあー!場外ホームラン」という陽仁の嬉しそうな雄叫びが響いた。
よく見ると、コートの中で唖然とする相手プレーヤーをよそに、全力でガッツポーズをする陽仁の姿が見えた。
「あの、バカ……」
「すごいね、はるくん本当にホームラン打っちゃった!それも場外ホームランだって」
可笑しそうに、楽しそうに、真悠が笑って言う。
和人は完全に呆れていたけれど、コートの方からはちらほらと拍手が起こり始めている。
おそらく、陽仁があんまり喜んでいるから、みんな雰囲気に呑まれたのだろう。
笑顔で駆け寄る真悠に、陽仁はやってやったぞ!と言わんばかりにラケットを高く掲げ、遅れてやってきた和人には、満面の笑みでぐっと親指を立ててみせる。
当然、テニスに場外ホームランなんてルールはないので、陽仁は誰よりもいい笑顔で初戦敗退した。
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